まずは知ることからー『Black Box ブラックボックス』ー

 今年は森友学園問題を始めとする現政権に纏わる様々なスキャンダルが報道されている。その中でも私に強烈な印象を残している事件がある。元TBS記者のレイプ事件が不起訴処分になった件だ。こんなことまで起こってしまうのか。この事件の報道を目にして、まず3つ下の妹のことがどうしても頭を過ってしまった。

 フリージャーナリストの伊藤詩織さん(当時は名前だけで、姓は非公表であった)が被害を受けたレイプ事件の不起訴処分を受け、それを不服として検察審査会に審査を申し立てたことを報告する会見を2017年5月29日に伊藤さん自身が行った。

 10月に出版された伊藤さんの手記『Black Box ブラックボックス』は、想像以上にショッキングな内容であった。多くの女性が置かれている現状について考えたことはいままでなかった。事件の詳細も事細かに記されており、かなり気分が悪くなるものであった。あまり気持ちにゆとりのない時に読むのは避けたほうがいいと思うが、それでも多くの人が読むべき本だと思った。

 法律の問題は解決されるべきものだが、現状法律に不備のある状態が続いている中、残念ながら自分自身でもできることを考えなくてはならないと思う。「飲み物を残したまま席を立たない」とか、「レイプされた場合は産婦人科ではなく、救急外来にいくべき」とか、知っておいた方がいいことがこの本の中には多くある。知識が人を守ることは少なくない。

 最近ではハリウッドの映画プロデューサーHarvey Weinsteinのセクハラが告発され、それが引き金となり、他の俳優・映画監督への告発も立て続けに起こっている。日本でも元アイドルが事務所の給与未払いに対しての訴えを東京地裁に起こしていると報道があった。

 当事者が声をあげることは非常に困難なことである。それでも声をあげ、当事者を周りがサポートしていけば、世の中は少しずつ良くなっていくのではないかと希望を持ちたい。

 「一刻も早く社会に伝えなくてはならない」という伊藤さんのジャーナリストとしての信念を無駄にしてはいけない。まずはこの本を妹に貸すことから始めようと思う。

 

参考記事:“詩織さん”から伊藤詩織へ 本人が語った、今著書を出版する理由

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20171016-00076896/