For you-私立恵比寿中学迎春大学芸会~foever aiai~-

 アイドルのファンになってから6年余りになるが、メンバーの卒業(転校・脱退)は初めての経験になる(松野さんは卒業ではない)。私立恵比寿中学廣田あいかが1月3日に卒業した。彼女のサバサバとした性格もあって、あまり湿っぽい気分にはならないと思っていたが、終演後に感じたのは漠然とした寂寥感であった。1曲1曲彼女がエビ中の曲でパフォーマンスすることは最後なのだと、自分に言い聞かせながらその姿を目に焼き付けていた。

 自身最後の公演のテーマは「推し変」であった。彼女のファンの心情はいかばかりかと思っていたが、自称女子の集団が苦手な廣田さんのメンバーへの愛に溢れた公演であった。グループを抜けるという決断と同時に、抜けることによって変化を強いられるメンバーへの後ろめたさもあるのだろうか。これから個人で活動を続けていくために、今のファンにも応援して欲しい気持ちは間違いなくあるはずだが、徹底してエビ中への想いを伝え続けていた。

 昨年2017年のアイドルグループの解散や活動休止が多発したことからも分かるように、アイドルブーム自体の盛り上がりは落ち着きを見せ始めている。そんなタイミングで改めて「エビ中とは何か」という問いかけを演出に組み込むことには大きな意味があった。長くファンをしている人にも改めて彼女達の魅力を再認識させ、何故彼女達を応援してきたのかを自覚させる演出であったように思う。彼女達の今後の活動にとって重要な公演となっていた。そして何より、彼女自身の魅力も再認識させられた。自分が選択したことであるにも関わらず、メンバーに対する想いで引き裂かれそうになっている姿は、今までで一番彼女が隠したがっている部分が出てしまっていたように思える。完璧にアイドルをしていたあなた自身から溢れるその姿が一番の魅力だと気が付かせられた。

 

 今後の彼女のエビ中への想いは大きく二つ感じるものがあった。まずは、廣田さんは自身の後継者に関してである。エビ中の入り口であり、グループ全体を客観視してきた彼女の後継者は非常に難しい役回りな気もするが、彼女は中山莉子を意識しているようだった。公演タイトルにかけて「Foreverりったん」と言わせてみたり、パンフレットでシュークリームを持たせたり(これは自身の推しでもある佐々木彩夏を彷彿させるものであり、正当な継承にも感じる)、グループ内でのつっこみ役の可能性に関しての言葉もあった。中山莉子にブリブリのアイドルを演じさせると同時に、冷たく言葉を放たせる演出も、彼女が推してきたアイドルと彼女自身がしてきたアイドル像そのもののように見えた。中山莉子もその魅力を一層引き出されていた。

 そして、松野莉奈への想いと松野莉奈を想うファンへの想いだ。松野さんのイメージの強い『なないろ』『感情電車』2曲を続けて行い、極め付けに『いつかのメイドインジャピャ~ン』を4人で行う演出があった。亡くなった彼女の映像と歌声をライブで使用するのはほとんど禁じ手のような演出ではあるが、廣田あいか最後のライブで彼女自身が演出していることで成立していた。あんなにアップテンポな明るい曲にも関わらず、涙を堪えるのが必死であった。ただこれは泣かせようとしておこなった演出とも違うように思う。8人から急に7人になり、松野莉奈がいない状態を1年近く続けていた。しかし廣田あいかが辞めることで、松野莉奈の不在が和らぐ。彼女への想いに一度けりをつけ、ファンにもある種のけりをつけさせる演出のようにも感じた。『なないろ』『感情電車』が別の意味を持たせる楽曲にすることが、今後は必要になってくるだろう。4年前に卒業した3人と同じ武道館という舞台で、松野莉奈の卒業も演出したかったように感じた。

 公演を通して感じたのは、彼女たちの絆が別れを経験することでより一層強くなっていることだった。4年前に8人になってからぐっと仲良くなった印象があるが、今はそれ以上のものを感じる。個性の異なる彼女達がシンクロしているように見える瞬間がいくつもある。新メンバー加入も個人的には悪くないと思っていたが、秋ツアーの豊洲PIT見たら今のメンバーだけでの活動も見てみたい気持ちになった。彼女のいなくなったエビ中も楽しみだ。

 

 最後のダブルアンコールでの『シンガロン・シンガソン』は、中央に置かれた液晶に映された彼女の表情をずっと見ていた。涙を見せず、笑顔で変顔もして、最後の最後までずっとアイドルでいてくれた。「出逢ってくれた貴方へ。幸せで居てね。」あなたの言葉に救われる人がどれだけいることだろうか。8年間お疲れ様でした。あなたのいたエビ中のファンでいた4年間は、夢のような時間でした。ありがとうございました。あなたの幸せを心から祈っております。これからも応援していきます。